龍玉師匠の豊志賀
新宿の道楽亭で、蜃気楼龍玉師匠の「豊志賀の死」を聴いてきました。
今年は菊之丞師匠、雲助師匠、馬吉さんと、様々な演者さんによる豊志賀を聴く機会がありました。中で馬吉さんのは夕顔の花が出てくる先代馬生師匠の型で、一幅の絵を見るような美しさと哀しさがありました。
龍玉師匠は今回ネタおろし。まず「深見新五郎」の後半部分から始め、中入りをはさんでたっぷり一時間以上の熱演でした。笑わせどころと聴かせどころのメリハリを効かせて全く飽きさせず、ネタおろしとは思えない完成度の高さです。登場人物の多い噺ですが、勘蔵が特に良かったように思います。新吉に意見をするところで、勘蔵が大人として達観しすぎていないところに龍玉師匠らしさがありました。
ところで豊志賀にはいくつか笑いどころのポイントがあります。雨の夜に新吉が豊志賀の言葉を繰り返すところ、布団にくるまって柏餅、「お久さん何処へ」「日野屋へ」のやりとりなどで、驚くことにこれらのくすぐりは円朝がすでに作っていたものです(岩波文庫版の速記参照)。笑いを喚起する仕組みが、基本的には時代を経ても色あせないことが分かります。くすぐりのひとつである豊志賀が新吉を朝起こす場面で、円朝の速記では吸付け煙草で起こします。圓生、志ん朝がやはり吸付け煙草で、菊之丞師匠もこの型でした。龍玉師匠は煙草を使わず、音源で確かめたところ雲助師匠も煙草はなしでした。
この龍玉師匠の「真景累ヶ淵」の続き読み、次回は1月23日、「お久殺し」をやるそうです。今から期待が高まります。