火事息子それぞれ
「火事息子」の主題のひとつに父と息子の関係があります。
火事が好きで勘当になった息子と、その父とが再会する場面の互いの複雑な気持ち。
特に、蔵の目塗を手伝ってくれた火消人足が、息子だったと知った瞬間の父親の反応は、それぞれの演者がそれぞれの演りかたでもって父親の心情を描き出しています。
三代目三木助師匠は「あの、さっき、あの彫り物だらけでもって、あの屋根から屋根へ、あれが?」と、父親の動揺をストレートに表現しています。
先代の正蔵師匠は「え、え、へええ、徳かい?あれが徳?うちの倅?へえ、変わりゃあ変わるもんだねえ…そうかい」と嘆息が混じり、先代馬生師匠は「孝太?あの馬鹿、あんなとこ飛んでもし落っこったら…」と愛情が怒りになって言葉に出ます。
志ん生師匠のは「へ、徳のやつか、そうか、あの野郎はまあどうも…」と深い哀しみを感じさせ、圓生師匠は「え、あ、藤三郎かい?あの、屋根から屋根へ、あの。危ないことをするじゃあないか」と、屋根から屋根へ飛び移ってやってきた息子の身を思わず心配してしまうという父親の情愛を感じさせます。
中でもっとも変わっているのは志ん朝師匠で、「え、あれが?吉三郎かい?そうか…やっぱりなあ、ふうん…」と、驚きながらもそれが息子ということをどこかで感じていたという不思議な父親の心持を、しっとりと描いています。
勘当になった若旦那が登場する噺は「湯屋番」「唐茄子屋政談」「船徳」など色々ありますが、親と再会を果たすという筋立ては他にないように思います。
おそらく演じる噺家さんの歳によっても、父と息子の距離感に差が出てくるのではないでしょうか。
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