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2012年11月10日 (土)

若旦那あれこれ

「火事息子」という噺は火事そのものがモチーフとなっており、また父と息子の関係も重要な主題のひとつだと書きました。さらにこの噺を若旦那というキャラクターに焦点を当てて考えてみると、他の噺に出てくる若旦那と比べてかなり特異な設定であることが見えてきます。

落語には実に様々なタイプの若旦那が出てくるのですが、細かく分類していくと、まず道楽者なのか、そうでないのかという二つに分かれます。

もっとも落語に登場する大抵の若旦那は道楽者で、「崇徳院」「千両みかん」「擬宝珠」「明烏」などのごく少数の若旦那がウブで生真面目な珍しいタイプです。

そして若旦那の道楽と言えばほとんどが廓通いなのですが、その中でも勘当になるかならないかの二つのパターンがあります。「湯屋番」「船徳」「紙屑屋」「唐茄子屋政談」などの若旦那は女遊びが元で勘当になっていますが、「山崎屋」「干物箱」「六尺棒」「二階ぞめき」「たちぎれ」「菊江の仏壇」などの若旦那は締め出しや謹慎をくらっても、勘当までには至っていません。

さて、若旦那の道楽の多くが女郎買いである一方で、中には「七段目」の芝居道楽や「義太夫息子」の義太夫道楽、また変わったところでは「宗論」の若旦那のように宗教にはまってしまう若旦那もいます。「火事息子」の若旦那もこの変わった道楽のケースの一人でしょう。ただし、前述したように勘当の理由は女遊びが原因であることが普通で、「火事息子」の若旦那のように女遊び以外の理由で勘当になるというのは、他にあまり例がないような気がします。

三道楽「呑む」「打つ」「買う」の「呑む」「打つ」で勘当になる噺はないかと記憶を探ってみたのですが、「親子酒」の若旦那は酔った親父から感動だと言われていますが本当に勘当にはなっていないようですし、博打にはまった若旦那というのもちょっと思い浮かびません。こうして見てみると、「火事息子」の若旦那が非常に特異なタイプであることがわかり、それぞれの演者がどのようにこの若旦那を演じているかに注目して聴いてみるのも、「火事息子」という噺の楽しみ方の一つであるように思います。

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