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2012年11月13日 (火)

淀五郎のこと

この11月中席(11月11日~20日)の池袋演芸場は、夜席のトリを古今亭菊之丞師匠がとっています。初日のネタは「淀五郎」だったそうです。菊之丞師匠で「淀五郎」とくれば、もう聴きたいのなんのって、身がよじれるほどですが、来年の1月22日(火)に麻布区民センターで行われる独演会でネタ出しされているのを発見しました。楽しみです。
さて「淀五郎」のことをあれこれ考えているうちに、もう聴きたくて居ても立ってもいられず、手持ちの音源から先代正蔵師匠、圓生師匠、志ん生師匠、と色々聴き比べてみました。
他にも発売されているものとしては先代馬生師匠のものや、少し変わった形の談志師匠のもの、一朝師匠や雲助師匠の音源もあります。一朝師匠の録音(iTunes Storeで発売)では、マクラで二つ目時代に歌舞伎の笛を吹いていたエピソードが語られていて、非常に興味深いです。
圓生師匠の「淀五郎」はNHK落語名人選のと圓生百席のと二通りあるのですが、やはりライブで録音された前者の方が聴いていて断然楽しいと思います。数多く残されている圓生師匠の演目の中でも、私は個人的にこの「淀五郎」が一番好きです。出囃子と拍手が鳴り終わらないうちにかすかな声で「お暑いなか…」とお辞儀をしている様子が目に浮かぶようで、さらにマクラで芸術座に役者として出演していることに触れるやや嫌味な感じ、そして噺に入ってからの、団蔵の酷薄さ、仲蔵の器量、淀五郎の苦悩を少しくさめに演じるところ、芝居に関するあれこれなど、まるで細部まで精緻に組み立てられた芸術品を見るかのような隙のない構成になっています。
さらにこの音源で何よりも特徴的なのは、この笑いの少ない噺がものすごく受けているところです。笑いどころでないような場所でさえ、観客の笑い声が入っています。これはおそらく演者がものすごく乗っていて、さらに観客が乗っていて、その相乗効果でもって会場に熱い空気ができていたのだと思います。落語に限ったことではないと思いますが、こういう空気になって会場全体が異様な盛り上がりになることがライブでは稀にあります。観客にとって、きっと演者さんにとっても、本当に幸福な瞬間です。この日の圓生師匠の「淀五郎」を聴いたお客さんはとても幸せな気持ちになったことでしょう。
圓生百席の方に収められた音源の、本編ではなく芸談の部分で、圓生師匠はこの噺の下げ方について解説しています。下げ方にいくつかのやり方があって、圓生師匠は自分の採用しているパターンが他のよりも優れていると言っているのですが、実はもう一方の下げのパターンを、圓生師匠のライバルと世間から目されていた八代目の正蔵師匠がやっているのです。次回は正蔵師匠の淀五郎について書きたいと思います。

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