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2012年12月21日 (金)

馬石版「芝浜」

12月の下席(昼席)、鈴本演芸場では「年の瀬に芝浜を聴く会」と題した企画番組が行われています。日替わりで異なる演者がトリに「芝浜」をかけるという趣向で、初日の今日は隅田川馬石師匠が主任でした。

馬石師匠以外の演者さんも若手の実力派がずらりと並び、こみちさん「旅行日記」、一之輔師匠「めがね泥」、龍玉師匠「ざる屋」、菊之丞師匠「棒鱈」、彦いち師匠「睨み合い」と、いかにも寄席らしいような、それでいて一捻りしているような楽しい演目が並びました。

一之輔師匠、さすがに勢いがある感じです。龍玉師匠は噺の途中で急に雲助師匠っぽくなる部分があり、興味深い。菊之丞師匠の「棒鱈」はいつも通りの安定感で、場内のご婦人の団体がキャッキャと笑っておりました。

さて馬石師匠の「芝浜」。これは確かに雲助師匠の形のはずなのに、雲助師匠的な演出が割と大胆に省かれていて、そのぶんしっかりとした馬石落語となっていました。雲助師匠や龍玉師匠のような輪郭を端正にしっかり描いていく方法と違って、馬石師匠の噺はメソッド・アクティングというのか、了見重視というのか、どちらかというと大師匠の先代馬生師匠に芸風の印象が近い気がします。
つまり「何だって良いんだよ、でもどうでも良いわけじゃない」という本質的な噺の構築の仕方を強く感じさせます。

この芝浜を聴く会の演者は他に雲助師匠、扇遊師匠、三三師匠、一朝師匠という面々が並んでおりますが、中で馬石師匠はおそらく主人公の勝五郎と実年齢が近いと思われます。そのせいなのか、気持ちの揺れ動く様の描写に無理がなく、重すぎずクサすぎず、スッと噺が入ってきて心地よかったです。
馬石師匠は今年の文化庁芸術祭の新人賞受賞が決定したそうで、これから益々注目の噺家さんです。

Baseki

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