「八重の桜」と落語の方言
今年のNHK大河ドラマ「八重の桜」は高視聴率でスタートしたそうです。私もとても面白く観ました。また、ところどころで会津言葉がよく聞き取れないのが印象的でした。
落語の中にもお国訛りは頻繁に登場します。「権助芝居」「権助提灯」「権助魚」などでお馴染みの飯炊きの権助のキャラクターは「あんだね、あにか呼ばっただかね」といった喋り方をしますし、「馬の田楽」「本膳」といった噺は田舎が舞台になっているため、出てくる人々が方言で会話しながらストーリーが進行していきます。
よく言われることですが、こういった落語に出てくる田舎訛りは、特定の地方の方言ではありません。いかにも訛りのように聞こえながら、実はどこの方言でもないという“落語訛り”が使われます。いわば記号としての方言です。
ただ、噺の中で場所が特定されていることもあります。「こんにゃく問答」は上州が舞台です。「試し酒」に出てくる久蔵は丹波の出身という設定です。「棒鱈」に出てくる訛りのある侍は薩摩武士です。また圓朝物では羽生村、栗橋宿といった地名が特定されることが多くあります。
ではそういった落語の中では登場人物がそれぞれの地方の方言を話しているかというと、そんなことはありません。どの落語でも同じように“落語訛り”を喋ります。私は群馬出身ですが、「こんにゃく問答」で話されるような方言は老人でも使いません。
しかし、そうかと言って「こんにゃく問答」の噺の面白さが失われるかというと、もちろんそんなことはありません。落語のリアリティと現実世界のリアルとは全く別物だと思います。
ちなみに大河ドラマの「八重の桜」も、方言のセリフが聞き取れないことは視聴の妨げには全くなりませんでした。生瀬勝久のような関西出身の役者を勝海舟という生粋の江戸っ子に配役しているのも非常に面白く思います。これからの展開が楽しみです。
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