正太郎さんの愛嬌
正太郎in六本木@六本木DOZ
春風亭正太郎さんの独演会で、今回で6回目。
演目は「反対俥」「湯屋番」「死神」の三席でした。ネタおろしを含む三席という非常に意欲的な構成で、お客さんも正太郎さんを聴いてやるぞという熱気に満ちています。
正太郎さんという落語家の身上は、何よりもその愛嬌にあると私は思っています。今日の会ではさらにその思いを強めました。
唐突ですが、正太郎さんの落語を聴くといつも、司馬遼太郎の「坂の上の雲」で主人公の秋山好古が兵学校の試験を受けに行くシーンが思い浮かびます。好古はここで丹波篠山から来た本郷房太郎という男に会います。
好古は房太郎のもつ愛嬌に感心し、尊敬の念に似た感情を抱きます。
“(こいつは出世するなあ)
と好古がおもったのは、父の久敬が藩から県にかけての小役人生活で得た智恵のようなものを良く語っていたことを思いだしたからだった。可愛げのある男は出世するというのである。“
正太郎さんにも何とも言えない可愛げがあり、死神のような噺をしてもそれが陰惨になりすぎない、これは芸人さんとして非常なアドバンテージであるように思います。
正太郎さんの「死神」は、ラストの部分で男が追い詰められていく様子がとても斬新に表現していて、しかも正太郎さんのオリジナルの工夫とのこと。
会の多さから見ても、、このようにネタに対して真摯に工夫をする姿勢から見ても、おそらく同世代では一番熱心な噺家さんだと思います。お客さんたちが力を入れて正太郎さんを聴くのも納得させられる、とても良い会でした。
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