落語に関する大きな間違い
今日はちょっと面白い顔付けの会に行ってきました。
「やみ鍋の会」@スタジオフォー。
月亭方正 鼻ねじ
古今亭文菊 転宅
三遊亭こうもり 堪忍袋
桂宮治 お見立て
この顔付けがどう面白いかというと、月亭方正と三遊亭こうもりというタレントから落語家へと転身した二人に対し、古今亭文菊、桂宮治というNHK新人演芸大賞受賞組、言わば落語界のエリートの二人という組み合わせが、なかなかの聴きどころであるなあと思ったわけです。
思ったわけですが、実際に聴いてみると、タレント出身だとか抜擢真打だとかそういうことは特に関係なく、全体的にとても楽しい会でした。
当然のことではありますが、われわれ観客にとっては噺を聴いている時間が楽しいかどうかだけが問題であって、演者さんの経歴そのものは全然関係ないわけです。
ところがところが。
落語に関する大きな間違いの一つとして、経歴の先入観によって落語を判断するような聴き方をする人が結構あるのです。
何よりもまずここで言いたいのは、落語通ぶった人たちがよく、「テレビに出ている落語家の噺はセコい」ということを言いたがるのですが、これははっきりと間違いだということです。
テレビに出ている落語家というのは、具体的には笑点のレギュラーメンバー、あるいは春風亭小朝、柳家花緑、林家正蔵といった師匠方ですが、寄席や落語会できちんとこういう方々の噺を聞いてみれば、いかに彼らが観客を楽しませるテクニックに富んでいるかが分かるはずです。
月亭方正さんもタレントとしての知名度が高いため、また落語家としてはキャリアが浅いため、よく聴きもしないでまずい噺家だと評価する声が特にネット上ではよく見受けられますが、実際に聴いてみれば決してそんなことはありません。
東京ではめったに聴けない「鼻ねじ」という珍しいネタを(先月のNHKラジオ深夜便で笑福亭生喬師匠の音源を放送していました)、楽しく賑やかに、かつ余計な入れ事なしにストレートに演じていて、上方落語らしい楽しさを十分に味あわせてくれました。
さらにその後に上がった文菊師匠がいかにも江戸前のさらっとした「転宅」。
泥棒が嫌らしさなく間抜けで愛すべきキャラクターで、惚れ惚れするような高座でした。
トリは宮治さん、いま一番勢いのある若手のひとり、例えて言うなら重い荷物を軽々と持ち上げて、文句も言わずにせっせせっせと運んでいくような高座でした。
さらに特筆すべきは、打ち上げに参加したところ、宮治さんの座持ちの良さが尋常ではなかったことです。
漫画に出てくる芸人さんのような芸人さんぶりで、もしかしたらこの人の面白さは寄席の高座には収まりきらないのかもしれない、と思いました。
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おっしゃる通りです。読んで、スッキリしました。
落語は、ナマで聴くのが基本だと思います。寄席中心で年間1000席くらい聴いていますが、昨年の5月に宮治さんの高座をたまたま聴いて、この人は違う。面白いと追っかけるようになりました。なんで今までこの人の存在に気付かなかったのだろうと思ったら、3月まで前座だったんだとわかってビックリしました。
高座を聴けば、噺家の実力、姿勢、気持ちはわかるものです。
正蔵師匠の高座には、普段の努力がにじみ出ていますし、聴く度に良くなっていることがわかります。
投稿: | 2013年4月23日 (火) 13時11分