天どんさんの良さについて書く
今回は三遊亭天どんさんについて書きたいと思います。
というのは、昨日の早朝寄席で天どんさんの「木乃伊取り」を聴いて、これがすごく良かったんですね。天どんさんはいま非常に勢いがあるな、と感じました。
そこで今回は天どんさんの良さについて書いていきます。
とは言うものの、僕は決して天どんさんの良い聴き手ではありません。
良い聴き手ではない、というのは彼を定期的に追っかけて聴いているわけではない、という意味なんですが。
手元の記録を調べてみると、この前に天どんさんを聴いたのは2月の「どんつきの会」(三遊亭萬橘師との二人会)で、その前は昨年12月の「さいたま落語亭」、その前が10月の「上石神井落語会」。
せいぜい二か月に一回くらいしか聴いていないんですね。
ただ、天どんさんの最近の良さについてあちこちで噂は聞いていました。
独演会で「双蝶々」を通しでやって、それが良かったという話を知り合いの天どんさんのファンの方から聞いていて、この会の良さについては今月の東京かわら版でもレビューが掲載されています。
僕が初めて天どんさんを聴いたのはそんなに前のことではありません。
5年くらい前に明大前で行われていた会で「富久」を聴いたのが初めてだと思います。
天どんさんは新作落語の俊英ですが、僕は彼単独の会を選んで聴きに行くことがなかったため、しばらくは大工調べ、五人廻し、ろくろっ首、不動坊、引っ越しの夢など古典にばかり当たり、彼の新作を聴く機会がありませんでした。
それからようやく聴くことのできた新作は「いたちの留吉」という噺で、すっかり時代に取り残された元極道を描いたもので、後で知ったのですが、これは天どんさんの師匠である円丈師匠の作でした。
その後いろいろあって、僕が担当していた「いーふろん亭」というネット落語番組に何度か出演していただきました。リスナーから新作落語も放送してほしいという要望が多く集まり、それならばぜひ天どんさんにお願いしようと思ったのです。
天どんさんのスタイルの面白さは、噺そのもののモチーフが現代的であるということはもちろんなのですが、演じながら逐一内容を自分にフィードバックさせていくところだと思います。
アドリブというのではなくて、思いついたことを結構ポンポンと喋りながら話を展開させていく。時代を切り取っているのと同時に、瞬間を切り取っている。噺の内容に関して、オレはこう思うけど、皆さんはどう思う、と聴き手に問いかけるように会場を巻き込んでしまう。
そこが天どんさんの落語の醍醐味で、また評価の分かれるところであるとも思います。
昨年、ある落語会で天どんさんの「品川心中」を聴く機会があって、それは大変素晴らしいものでした。
天どんさんのスタイルと噺がマッチして、とても新しいと感じました。
それを彼に言うと、品川心中は大ネタなのでみんな気負ってしまうけど、(辰巳の)辻占が長くなったもんだと思えばいいんですよ、と決して衒うことなく言ったのが印象に残っています。天どんさんらしいなと思いました。
つまり大ネタであろうとなかろうと、彼がそこから取り出して聴き手に届けようとしているエッセンスは変わりがないということだと思います。
それで、話は戻りますが、昨日聴いた「木乃伊取り」。
これは決して会場を爆笑の渦に巻き込むという感じではなかったのですが、ゆっくりゆっくりと重いローラーを転がしながら会場を笑いで地ならししていくように、自分のペースでお客さんを惹きけていきました。
それもただ均一にならしていくのではなく、ところどころピンポイントでくすぐりを打ち込んでいく。彼の技量の凄さを感じました。
天どんさん、秋の真打昇進を前に確実に勢いを増しているようです。
間違いなく今聴くべき若手噺家さんの一人ですね。
「いーふろん亭」出演当時の天どんさん。
右は入船亭遊一さん、うしろ姿は春風亭ぴっかりさん(当時ぽっぽ)。
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