志ん生のCDを買う
このあいだの日曜日に近所のブックオフで古今亭志ん生のCDを見つけました。
クラウンから出ている「古今亭志ん生ベストセレクション」シリーズの一つで、「坊主の遊び」と「星野屋」が収められています。
志ん生の音源は結構持っているつもりだったのですが、これはどちらも聴いたことがありません。
そもそも、この二つのネタは他の演者でもあまり音源として市販されていないように思います。
「坊主の遊び」のほうは、志ん朝師匠の口演が「志ん朝初出し」というシリーズに収録されています。
それと小学館から出ている「落語のいき」というDVD付ブックの中に円歌師匠のものが収められています。
普段ならすぐに買うのですが、その時は買いそびれてしまいました。
何故か。
その理由は、一つには値段です。
1,750円で売られていたのですが、そもそもの定価は2,000円の品でした。
隣に置いてあった志ん朝師匠のCDはもっと安い値段で売られています。
何となく足元を見られたような気がして、中ッ腹で、こんなもの図書館で借りてやる、と思ったのですが、あとで調べてみると葛飾区の図書館には在庫がなく、わりと落語の音源が充実している北区の図書館でも収蔵していませんでした。
Amazonでは在庫切れとなっていて(絶版なのでしょう)中古品の出品もありません。
そうすると、欲しいという気分が高まってきます。
※ちなみに近くに置いてあったジェロのCDも1,750円だったので、これがブックオフの値付けの仕方のようです。
値段のほかに手が伸びなかった理由は、ジャケットの裏に【坊主の遊び 昭和三十八年 TBS 二十分四十三秒】と書いてあって、なるほど、これはラジオ放送された音源だということが分かったためです。
ラジオ放送された音源がそのままCDに収められた場合、放送時間に合わせてぶつぶつ編集されていることが多くて、聴いていて非常にイライラします。
二十分四十三秒というのはあまりに時間がきれいすぎるので、無残に編集されている音源なのではないかという懸念があったのです。
そんなこんなで一度買いそびれると何故かすぐに買う気になれず、かといって誰かに買われてしまったら惜しいなという気持ちもあり、ずっとモヤモヤしておりました。
そのブックオフは駅に行くにもスーパーに買い物に行くにも前を通るので、そのたびに覗いては「まだある」「まだほかに買われていない」と安心し、これは「水屋の富」のようだと思い、四日目の今日、やっと手に入れました。
まあ身貧に暮らしてはおりますが、1,750円払ったところで家の経済が傾くというほどではありませんし、何よりも志ん生師匠の二席を聴きたいという気持ちに勝てなかったのです。
さてその二席を聴いた感想。
まず、どちらも不自然に編集されているような感じがなく、楽しく聴くことができました。
「坊主の遊び」は昭和38年の音源で、やや口調がゆっくりしていて口跡ももつれているので、病後の録音かも知れません。しかし、その分ゆったりとした大人の遊びの空気が感じられて、すごく良かったです。
「星野屋」の方はもう少し早い時期の録音のようです。この噺は龍玉師匠と玉の輔師匠とで何度か聴いたことがあるのですが、あまりよく覚えていません。
導入は旦那が女を訪ねるところから始まると記憶していますが、この志ん生のバージョンは権助魚みたいにおかみさんが悋気するところから始まります。
いや、記憶が曖昧なので、別にこれが普通のやり方なのかもしれません。
客席がすごくひきつけられて聴いている様子が目に浮かぶようで、要所要所ではすごく受けていて、音だけでもかなり楽しめます。
このCD、やはり買ってよかったです。他の人に買われなくてよかった。