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2013年5月

2013年5月30日 (木)

志ん生のCDを買う

このあいだの日曜日に近所のブックオフで古今亭志ん生のCDを見つけました。
クラウンから出ている「古今亭志ん生ベストセレクション」シリーズの一つで、「坊主の遊び」と「星野屋」が収められています。

志ん生の音源は結構持っているつもりだったのですが、これはどちらも聴いたことがありません。
そもそも、この二つのネタは他の演者でもあまり音源として市販されていないように思います。
「坊主の遊び」のほうは、志ん朝師匠の口演が「志ん朝初出し」というシリーズに収録されています。
それと小学館から出ている「落語のいき」というDVD付ブックの中に円歌師匠のものが収められています。

普段ならすぐに買うのですが、その時は買いそびれてしまいました。
何故か。

その理由は、一つには値段です。
1,750円で売られていたのですが、そもそもの定価は2,000円の品でした。
隣に置いてあった志ん朝師匠のCDはもっと安い値段で売られています。

何となく足元を見られたような気がして、中ッ腹で、こんなもの図書館で借りてやる、と思ったのですが、あとで調べてみると葛飾区の図書館には在庫がなく、わりと落語の音源が充実している北区の図書館でも収蔵していませんでした。
Amazonでは在庫切れとなっていて(絶版なのでしょう)中古品の出品もありません。

そうすると、欲しいという気分が高まってきます。
※ちなみに近くに置いてあったジェロのCDも1,750円だったので、これがブックオフの値付けの仕方のようです。

値段のほかに手が伸びなかった理由は、ジャケットの裏に【坊主の遊び 昭和三十八年 TBS 二十分四十三秒】と書いてあって、なるほど、これはラジオ放送された音源だということが分かったためです。
ラジオ放送された音源がそのままCDに収められた場合、放送時間に合わせてぶつぶつ編集されていることが多くて、聴いていて非常にイライラします。
二十分四十三秒というのはあまりに時間がきれいすぎるので、無残に編集されている音源なのではないかという懸念があったのです。

そんなこんなで一度買いそびれると何故かすぐに買う気になれず、かといって誰かに買われてしまったら惜しいなという気持ちもあり、ずっとモヤモヤしておりました。

そのブックオフは駅に行くにもスーパーに買い物に行くにも前を通るので、そのたびに覗いては「まだある」「まだほかに買われていない」と安心し、これは「水屋の富」のようだと思い、四日目の今日、やっと手に入れました。

まあ身貧に暮らしてはおりますが、1,750円払ったところで家の経済が傾くというほどではありませんし、何よりも志ん生師匠の二席を聴きたいという気持ちに勝てなかったのです。

Sinshou
買いました! 1,750円也。

さてその二席を聴いた感想。

まず、どちらも不自然に編集されているような感じがなく、楽しく聴くことができました。

「坊主の遊び」は昭和38年の音源で、やや口調がゆっくりしていて口跡ももつれているので、病後の録音かも知れません。しかし、その分ゆったりとした大人の遊びの空気が感じられて、すごく良かったです。

「星野屋」の方はもう少し早い時期の録音のようです。この噺は龍玉師匠と玉の輔師匠とで何度か聴いたことがあるのですが、あまりよく覚えていません。
導入は旦那が女を訪ねるところから始まると記憶していますが、この志ん生のバージョンは権助魚みたいにおかみさんが悋気するところから始まります。
いや、記憶が曖昧なので、別にこれが普通のやり方なのかもしれません。

客席がすごくひきつけられて聴いている様子が目に浮かぶようで、要所要所ではすごく受けていて、音だけでもかなり楽しめます。

このCD、やはり買ってよかったです。他の人に買われなくてよかった。

2013年5月29日 (水)

雨の落語

関東地方が梅雨入りしたそうです。観測史上3番目の早さだとラジオで言っていました。
今日は梅雨入りにちなんで、雨の落語について書きます。

その前に、昨日、柳家小んぶさんの勉強会「ジャイアントケルプ」に行ってきて、写真を撮らせてもらったので載せます。

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ピースをしているのですが、大きすぎて画面に収まりませんでした。

小んぶさんは聴くたびに面白くなっている気がします。
落語界の「進撃の巨人」です。

さてさて、雨の落語について。
雨の出てくる落語というのは、探せばかなりあるような気がします。

圓朝物なんかだと、のべつに雨が降っているような印象があります。
最近聴いた圓朝物で印象的なのは、龍玉師匠の「お久殺し(真景累ヶ淵)」で、雷雨の中で二人の男が揉み合うシーン。
なるほどこれは激しい雨の降る中での出来事でなくてはならないなあと思わせます。

圓朝物ではありませんが、人情噺だと「お初徳兵衛」の雨のシーンが艶っぽくて素敵です。
「らくだ」の回想シーンで雨が降るというのもあるらしいですね。
また「金明竹」では雨が降り出して客が傘を借りに来る秀逸なくすぐりがあります。

雨が落語の場面で重要な小道具として使われている例だと、まず「道灌」。
これは雨が降らないとオチにつながりません。

それから「中村仲蔵」。
これも雨が降ることで、一人の役者の人生を変える出会いが生まれまる、雨にきちんとした必然性がある噺です。
僕は雲助師匠の仲蔵が好きです。

そして何と言っても「笠碁」。
これは梅雨なのか、秋の長雨なのか分かりませんが、降り続く雨の中で気持ちが滅入っていく様、そして旧友を思う心の動きなどが聴きどころの噺です。
雨でなくとも噺は成立すると思ますが、雨だからこそ登場人物の心情にリアリティーが生まれる例だと思います。

僕が聴いた中では橘家文左衛門師匠の「笠碁」がたまらなくチャーミングで良かったです。
また金原亭馬治さんの「笠碁」も、老人たちがじりじりする感じがよく出ていて、二人が仲直りする場面では会場に拍手が沸いたのを記憶しています。

雨の降る日は、うちに中でじっくり落語の音源に耳を傾けるのも良いかもしれません、
とまとめておいて、最後に宣伝。

蜃気楼龍玉師匠と、秋に真打昇進をひかえてのりにのっている三遊亭天どんさんが「山崎屋」をリレーで口演します。
「山崎屋」リレー口演、7月20日(土)開催です。
詳しくはこちらをご覧ください。
お待ちしております!

2013年5月23日 (木)

絶品、龍玉師匠

昨日は蜃気楼龍玉師匠の落語を聴きに新宿の道楽亭に行ってきました。

隔月で「真景累ヶ淵」を口演していく会で、今回は「お累の婚礼」の部分。
龍玉師匠の格好良さを心ゆくまで楽しむことのできる会です。

「真景累ヶ淵」は非常に長い噺で登場人物も多いので、誰と誰がどういう関係にあるのか、聴いているうちにやや曖昧になってきます。

こういう人物の相関図が聴いているうちにわからなくなるという現象は、ロシアの小説だとか、平家物語とか、あるいはゴッドファーザーのシリーズとか、長大な大河ドラマにはありがちなことなのですが、それはそれでいいのです。

そもそも連日の続き物として聴いていた明治・大正時代の客ですら、きちんと登場人物を把握して聴いていたわけではないと思います。

ですから「真景累ヶ淵」を長い因縁噺として見渡しながら聴こうとするのはそれほど意味がなくて、たとえ途中を聴き逃しても、毎回きちんとストーリーに面白いところ、聴きどころを楽しめます。また細部を楽しんでいるうちに全体がイメージとして浮かび上がることもあります。

さて「お累の婚礼」のパートでの聴きどころは、何と言っても小悪党の甚蔵のいかにもネチネチとした強請(ゆすり)。

小悪党をやらせると右に出るものはない龍玉師匠が甚蔵を演じている様は、いかにも楽しげで、小憎らしいながらも愛嬌があり、絶品としか言いようがありません。
これは若い頃の成田三樹夫か石橋蓮司の役どころだなあと思いました。

こういう嫌われ者をやりながら嫌らしくならないのは、演者さんに愛嬌があるからに違いありません。

それと主人公の新吉が若く美しい娘であるお累と恋に落ち、その恋が悲劇的な方向へと進んで行ってしまうのですが、その何とも言えずじめじめとした雰囲気を龍玉師匠はクサさを抑えて演じています。

このあたりは師匠のスタイルと技量とが絶妙なバランスでもって組み合わさっていて、聴いていてため息が出るような気がしました。

今後、主人公の新吉はどんどん嫌な奴になっていき、ストーリーもドラマチックに盛り上がってきます。
次回は7月30日に開催とのことです。楽しみ楽しみ。

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龍玉師匠。

龍玉師匠が出演する「山崎屋リレー口演」、7月20日(土)開催です。
こちらもお楽しみに!

2013年5月21日 (火)

町屋お笑い寄席に行きました

本日はムーブ町屋のハイビジョンルームで開催されている、町屋お笑い寄席に行ってきました。

以前は落語協会の二階でやっていたこの会、町屋に会場を移して二回目です。
前回は都合が合わずに行けなかったのですが、町屋は行きやすい会場なのでぜひ一度行ってみたいと思っていました。

出演は古今亭志ん吉、春風亭昇々、鈴々舎八ゑ馬、林家はな平の皆さん。

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メクリ台がないため、ホワイトボードにメクリ貼り、
出演順に花を動かすという斬新なアイディア。

春風亭昇々「初天神」

久々に落語を聴いて腹を抱えて笑いました。

初天神はよく演じられるネタですが、噺家さんによって結構いろいろな工夫が分かりやすく加えられています。
そのひとつに子供をエキセントリックな方向に持っていくことで笑いを取るやり方があると思います。
馬石師匠のは子供が鉄火な職人風、馬るこさんのは客席に乱入していくという型破りな子供、そして昇々さんの場合は、ほとんど薬物中毒なんじゃないかと思うくらい過剰なテンションの子供でした。
今野浩喜(キング・オブ・コメディ)がコントでやる子供を思い浮かべましたが、さらに病的に過剰に造形されていました。

ただ惜しいと感じたのは、この子供を受け止める、言わばツッコミ役の親の方が弱かったこと。
子供だけがぐいぐい行ってしまうので、聴き終わった後に騒がしいだけの印象になってしまう気がしました。

古今亭志ん吉「岸柳島」

志ん吉さんは志ん橋師匠に口調がよく似ていますが、トーンが高く跳ね上がるところ(このネタでいうと「請け合うねェ」の「ねェ」とか「飛び込んでるゥ」の「るゥ」)の部分が、志ん生っぽくなることろがあって、きっちりとした芸風の人だけれど、きっちりじゃないのも似合うのではないかと思いました。

林家はな平「七段目」

はな平さんは二つ目になって2年以上たっていると思うのですが、僕は昇進以来初めて聴きました。
前座さんだった頃に、銀座の山野楽器で「たがや」をやったのを聴いたことがあって、そのときは落語は面白いけれど全体的に地味だなという印象でした。

でも今日久々に聴いてみると全くそんなことはなくて、むしろ華やかな、わりと色っぽい高座であるように感じました。
おそらく芸にきちんとした品がある人だと思うので、逆に突拍子もない下ネタとかが似合うんじゃないでしょうか。「なめる」とか。

ちなみに僕は、彼が二つ目になった時の落語協会メルマガの懸賞に当たって、彼の手拭いを持っています。

鈴々舎八ゑ馬「抜け雀」

何となく以前より精悍になった感じ。痩せたのかな?

八ゑ馬さんはどことなく漫画っぽいキャラクターだと思っていたのですが、幾分風格が備わってきたような。

八ゑ馬さんの前説によれば、この「抜け雀」は、江戸の噺を米朝師匠が上方に移した珍しいパターンだそうです(江戸落語の演目の多くは上方に起源がある)。
上方の噺というのは江戸と比べると全体的に合理的にできていて、この噺も上方バージョンになると理に落ちてしまうというか、ストーリーに飛躍が失われてしまう気がします(これは全然八ゑ馬さんの落ち度ではありませんが)。

八ゑ馬さんは東京で上方の噺をする貴重な噺家さんのひとりですが、新作もとても面白いし、実力もある人だと思うので、「上方の噺をする面白い噺家さん」の枠にはまらず、そこに飛躍を加えてくれるといいなあと思いました。

ところで。
志ん吉さんが喋っていた格安航空のマクラがとても面白かったです。

格安航空は無駄なコストを徹底的に省いて、必要なものを必要な形でお客様に提供するのが良いところですが、この落語会もそんな感じでした。

表方は席亭さんが一人で切り盛りし、落ち着いて噺を聴ける静かな空間があり、料金は安くて、噺家さんはみなさん情熱的に高座に取り組んでいました。
無駄な飾り気はありませんが、こういう落語会がもっと増えればいい、こういう落語会をやりたいな、と思わせる素晴らしい会でした。

次回は8月だそうです。おススメです!

2013年5月19日 (日)

天どんさんのことを考える

先日、三遊亭天どんさんが講師をつとめる落語講座を受講してきました。

天どんさんは新作落語の台本を指導するクラスを持っていますが、こちらは落語の実演指導の教室です。天どんさんが短い噺をいくつかやって見せて、それを覚えてきた生徒が実演し、それに天どんさんがアドバイスをするという形式でした。

天どんさんが噺を解説したり、あるいは生徒に対して細かいテクニックを指導したりするのを聴いていて、なんとなく感じたことがあるので、ここに書きたいと思います。

まず、僕はこれまで天どんさんは「ゆらぎ」の人であると感じていました。
これは「自在」と言い換えても良いかもしれません。

演じ方のスタイルとして、途中で古典落語のストーリーに突っ込みを入れたり、あるいは自分の言い間違えを自分でいじったりするので、天どんさんの噺はいつも流動的にゴールを探しながら進行していると感じていました。
非常に細かく枝分かれした道を手探りで歩きながら進んでいくような印象を持っていたのです。

でも今回天どんさんの指導を聴くことによって、その印象を大きく改めました。

まず天どんさんは非常にインテレクチュアルな人です。

彼の落語指導を聴いていると、いかに噺の構造に対して深い洞察力を持った噺家さんであるかが分かります。

それはプロとして当然のことなのかもしれませんが、詳細に噺の細部を検討しているのです。
そして僕は、天どんさんのスタイルは、この細部の検討により生み出されるのではないかということに思い当たりました。

つまり、今まで僕が手探りだと感じていた部分は決してそうではなく、ひとつの噺を常に分解、再構築しつつ、その姿を高座でドキュメントとして見せる手法であるのだという印象に変わってきたのです。

そういう意味では天どんさんは非常に希少なタイプの得難い才能であると思います。
この才能が今後どう進化していくのか、多くの落語ファンにとって大きな楽しみではないでしょうか。

それから最近天どんさんについて面白かったのは、7月20日に開催される「山崎屋リレー口演」の打ち合わせをしているときに、「龍玉くんが手抜きして覚えてこない時のために、僕が全部覚えておくから大丈夫です」と冗談ながらも言い放ったことです。

この企画は「山崎屋」というネタを天どんさんと蜃気楼龍玉師匠とでリレーで口演しようというものなので、自分のやるところだけ覚えておけばそれでもいいのですが、きっと天どんさんは完全に仕上げてくると思います。
実は天どんさんが謹直の人であるかのが分かります。

もちろん龍玉師匠だって手を抜くということはないはずです。

ということで最後は宣伝ですが、7月20日(土)の「山崎屋リレー口演」、きっと面白い高座になると思いますので、ご予約よろしくお願いいたします。
皆様のお越しをお待ちしております!

ご予約はこちらまで: rakugoten@yahoo.co.jp

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「山崎屋リレー口演」のおしらせ

本公演は終了いたしました。
沢山のご来場ありがとうございました!

蜃気楼龍玉と三遊亭天どんが、ネタおろしの「山崎屋」をリレー口演。

真打昇進を目前に勢いを増す天どんと、古典の王道を疾走する龍玉。
二人の俊英によるこのリレー企画、果たして吉と出るか、凶と出るか?

「山崎屋リレー口演」 龍玉+天どん

日時:2013年7月20日(土) 開場12:30 開演13:00
会場:お江戸両国亭
(※総武線「両国駅」、大江戸線「両国駅」徒歩5分)
木戸銭:前売2,000円 当日2,500円
出演:蜃気楼龍玉、三遊亭天どん

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2013年5月18日 (土)

「ぴっかり☆実験室」ご来場ありがとうございました

本日は第一回「ぴっかり☆実験室」を無事開催することができました。

主演の春風亭ぴっかりさんには、彼女が前座時代(当時ぽっぽ)に僕が勤めていた会社の製品紹介ビデオに出ていただいたり、インターネット落語番組の開口一番をお願いしたご縁があり、二つ目になったらぜひ会をやらせてくださいと話をしていて、今回がやっとその実現となりました。

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両国亭の高座

ぴっかりさんは人気者で色々な会にレギュラーで出演されていますが、他の会と違ったこの実験室のテーマは、将来に向けて芸人さんとしての体力を身につけようということにありました。

例えば地方の営業などでは漫談の力が必要であろうからそこを鍛えようとか、大ネタのネタおろしは他の会があるから、この会ではむしろ寄席サイズのネタのブラッシュアップをしていこうとか、どちらかというと地味な基礎体力作りを目指す会にしたいなと考えていました。
さてその試みやいかに?

番組
湯屋番 ぴっかり
松曳き 馬石
片棒  ぴっかり

会そのものは、大勢のお客様にお越しいただいて、とても雰囲気の良い会になったと思います。
新しい会を立ち上げると、主催者としては一番気になるのがお客様の入りですが、ご予約に加えて当日のお客様もたくさん来ていただきました。ありがたい限りです。

楽屋入りしたぴっかりさんに「準備万端ですか?」と尋ねると「わからない…うーん、なんとかする!」とやや自信がないようなことを言っていましたが、トークの部分もかなり受けていたようで、頼もしい限りです。
設定した会のテーマは、初回としては成功したようです。

ゲストの馬石師匠も会を盛り上げてくださいました。
師匠が上がる前に冗談で「手加減なしでお願いします」と、つまり後輩の勉強会だからといって盛り上げ役だけでなくガンガン行ってくださいという意味で言ったのですが、「松曳き」という十八番をかけてくださって、個人的にはすごく嬉しかったです。

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馬石師匠。男前!

この会、次回は12月21日(土)を予定しています。ゲストなど決定次第、またご報告いたします。

ぜひまた、何卒よろしくお願い申し上げます。

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ツーショット。

2013年5月 6日 (月)

船橋で喜多八師匠を聴く。

ゴールデンウィークも後半ですね。

落語を聴きに行きたいなあと思ったのですが、連休の寄席はやや木戸銭が高いのと混むので、定席以外の、予約なしでふらっと行けるような会がないかとかわら版で探していたところ、ありました。

船橋で開催されている東西寄席。
出演は柳家喜多八師匠。
2か月に一回開催されているそうで、79回目だそうです。歴史ある地域寄席です。

会場は船橋駅から歩いて10分弱くらいの、小さなスペース。天井には照明のライトがいくつか設置されていますが、なんとなく普通の民家のような、公民館のような感じでした。

こういう地域寄席が世の中にたくさんあって、木戸銭も観客の入りもさまざまで、そのそれぞれに独特の顔があって、とても良いものです。

東西寄席は木戸銭2,000円、入りは30人弱で、開口一番に素人が一席、その後に喜多八師匠が二席という構成。
素人の方が前座代わりを務める地域寄席は他にもありますが、まあ割と珍しいです。
みなさん凄く達者です。

お客さんはほとんどが地元のお年寄り、世話人さんと顔見知りといった感じ。
たぶんこの会以外では落語を聴いたことがないという方も多いようで、喜多八師匠がマクラで歌舞伎座に触れたりすると、その話題で隣同士が話し出しちゃったりします。寄席の団体客なんかでもよくある光景です。

喜多八師匠は一席目に「居残り佐平次」、最後のサゲまで。
二席目は「猫の災難」。

高座に上がって、やや目元が疲れている感じだったので、お体の具合は大丈夫かなと心配したのですが、まったくの杞憂でした。
噺に入った途端にぐんぐんグルーヴ感が増してきて、爆笑に次ぐ爆笑。
そもそも、こういう会で居残りをかけるというのは、よっぽどお客に対する信頼がなければできないことのように思いますが、さすがにそこは歴史ある会で、ずっと出演しているという強みがあるのでしょう。

確か堀井憲一郎さんが何処かで書いていたと記憶しているのですが、亡くなった談志師匠は地方の客も東京の落語マニアも同じ扱いをしていたそうで、つまり落語を聴きなれた客でないとウケないようなネタを地方でもやっていたということですが、今日の喜多八師匠もそういうことであったような気がします。

猫の災難はたまの休みに酒を飲みたがる男の噺なので、祝日の今日にはぴったりのネタ。柳家のお家芸という感じで、落語をゆったりと聴く楽しさに溢れた一席でした。

東京からだとやや遠いのですが、行って本当に良かった。
また行ってみたいと思わせる会でした。

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高さ80センチくらいの、ほとんど見落としそうな案内板。

「ぴっかり☆実験室」ご予約受付中です!
5月18日(土)13時開演
出演:春風亭ぴっかり ゲスト:隅田川馬石
詳細はこちら

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