絶品、龍玉師匠
昨日は蜃気楼龍玉師匠の落語を聴きに新宿の道楽亭に行ってきました。
隔月で「真景累ヶ淵」を口演していく会で、今回は「お累の婚礼」の部分。
龍玉師匠の格好良さを心ゆくまで楽しむことのできる会です。
「真景累ヶ淵」は非常に長い噺で登場人物も多いので、誰と誰がどういう関係にあるのか、聴いているうちにやや曖昧になってきます。
こういう人物の相関図が聴いているうちにわからなくなるという現象は、ロシアの小説だとか、平家物語とか、あるいはゴッドファーザーのシリーズとか、長大な大河ドラマにはありがちなことなのですが、それはそれでいいのです。
そもそも連日の続き物として聴いていた明治・大正時代の客ですら、きちんと登場人物を把握して聴いていたわけではないと思います。
ですから「真景累ヶ淵」を長い因縁噺として見渡しながら聴こうとするのはそれほど意味がなくて、たとえ途中を聴き逃しても、毎回きちんとストーリーに面白いところ、聴きどころを楽しめます。また細部を楽しんでいるうちに全体がイメージとして浮かび上がることもあります。
さて「お累の婚礼」のパートでの聴きどころは、何と言っても小悪党の甚蔵のいかにもネチネチとした強請(ゆすり)。
小悪党をやらせると右に出るものはない龍玉師匠が甚蔵を演じている様は、いかにも楽しげで、小憎らしいながらも愛嬌があり、絶品としか言いようがありません。
これは若い頃の成田三樹夫か石橋蓮司の役どころだなあと思いました。
こういう嫌われ者をやりながら嫌らしくならないのは、演者さんに愛嬌があるからに違いありません。
それと主人公の新吉が若く美しい娘であるお累と恋に落ち、その恋が悲劇的な方向へと進んで行ってしまうのですが、その何とも言えずじめじめとした雰囲気を龍玉師匠はクサさを抑えて演じています。
このあたりは師匠のスタイルと技量とが絶妙なバランスでもって組み合わさっていて、聴いていてため息が出るような気がしました。
今後、主人公の新吉はどんどん嫌な奴になっていき、ストーリーもドラマチックに盛り上がってきます。
次回は7月30日に開催とのことです。楽しみ楽しみ。
龍玉師匠が出演する「山崎屋リレー口演」、7月20日(土)開催です。
こちらもお楽しみに!
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