寄席のマナー考
今日は寄席でのマナーについて書きたいと思います。
なぜ寄席でのマナーについて書きたいと思ったかというと、先日鈴本に龍玉師匠を聴きに行ったとき、開演中に客席を立って会場の写真をパチパチ撮っているお客さんがいたのと、龍玉師匠のトリの出番が終わったあと「ブラボー」と大声で声をかけた客がいたのを目にしたからです。
落語ファンの皆さんには、それぞれに異なった落語の楽しみ方があると思います。
寄席や落語会に足しげく通う方には、自分なりの落語の聴き方、マナーの心得があるでしょう。
僕自身は、基本的には落語は自由に楽しむのが一番だと考えています。
落語だけでなく、観劇でもコンサートでも、あまりうるさいルールを押し付けるのはかえって野暮だと思います。
大切なのはお客さんが会場に足を運んで落語を、芝居を、音楽を楽しむということなので、ヘタに敷居が高くなってもいけません。
そうは言っても、寄席で落語を聴くのは家でテレビを見ているのとは違います。
公の場所にいるわけですから、やはりそれなりに守らなければいけないルールはあります。
僕は一応会を主催する立場でもありますので、例えば客席に何かトラブルがあれば、それに対処しなければいけない。
だから問題が起こらないためにも、ある程度のマナーは必要だと考えています。
このブログを読んでいらっしゃる方は、おそらくそのあたりの心得はすでにお持ちの方ばかりだと思いますので、共感できる、とかそれは違うだろ、とか思いながら読み飛ばしていただけると幸いです。
まず第一に、寄席側がやるなということはやってはいけません。
撮影や録音、携帯やタブレットの使用、開演中のお喋り、これはすべて寄席では禁じられていますし、きちんとアナウンスもされています。
寄席によっては飲酒も禁止されています。これは固く慎むべきでしょう。
これらは禁止事項なので、破った人は追い出されても文句を言えないと思いますし、寄席でも周りの人から注意されるという光景をよく目にします。
何故これが禁止されているかと言えば、ほかのお客さんの迷惑になるからです。
写真を撮っている人がいると、観客の注意がそっちに行ってしまい、落語に集中できなくなってしまうのです。
とくに前述の鈴本の写真の客は、わざわざ席を立って通路を歩き回ってパチパチやっていて、目障りなことこの上ありませんでした。
実は僕も写真でしくじったことがあります。
会社の仕事で落語会を開催していたとき、宣伝用の写真を開演中に撮っていたのですが、後日、出演していただいた噺家さんにやんわりとたしなめられました。
それ以降、どうしても撮影の必要があるときは、舞台袖から、あるいは会場の一番後ろから、マクラのあいだだけ数枚撮影することにしています。
上記のような禁止事項は絶対に守らなければいけない、というのを前提にしたうえで、さて次はこれはやらない方がいいだろう、という個人的な意見を書きます。
1、食事は禁止されていないけれど、なるべくなら休憩中に食べる。
迷惑に思う人がいると思うので控えた方がいいかもしれません。
僕は隣で弁当を食べている人がいても、音がうるさくなければ気にしません。
あまりに豪華な弁当だとそっちが気になっちゃうということはありますが。
2、掛け声はヘタにかけない方が良い。
個人的には紙切りを別にしては、高座に声をかけた経験はありません。
噺家さんにも、声をかけられて嬉しい人とそうでない人がいるので、これは一概に言えないかもしれませんが、まあ黙って聴いている方が無難じゃないでしょうか。
長年の落語ファンの方で、はたから見ていて「なるほど、落語はああやって聴けばいいんだな」と個人的にお手本にしている方が何人かいます。
そういう方々は高座に声をかけるようなことはしません。だから僕も慎むようにしています。
ちなみにそういう方たちは落語の知識をひけらかすことなく、もちろんほかの客の迷惑になるようなことは一切ぜず、打ち上げで若手の噺家に駄目だしするようなこともなく、応援する芸人さんにはそっときれいに祝儀をきる。
もちろんブログで誰々はつまらないなんて書いたりしません。カッコいいなあ。
なかなか真似できないことです。
ちなみに掛け声で「ブラボー」というのは、あまりにみっともないので、やめた方がいいでしょう。
しかも声をかけたのは女性だったようです。
これは差別的な意図では決してありませんが、女性の掛け声というのは感心しません。
歌舞伎の大向こうにも女性はいません。
大声が出したかったらアイドルのコンサートとかに行くのがいいのではないでしょうか。
3、お酒がOKのところでも泥酔しない。
これは体に悪いです。
4、通ぶらない。
これについては自戒の念を込めて書きます。
まず変な独り言をつぶやく人。特に演目を言う人がいます。
噺に入った途端に「転宅か」とか。
なんですかね、あれは。どういう心理なんだろう。
落語のことを良く知っているよと周りにアピールしたいのかな。
ドラマ「タイガー&ドラゴン」で尾美としのりが必ず演目を口にする客の役(「お、いいねえ、厩火事」とか)だったのですが、あれはドラマ上の演出なので、寄席で実際にやらない方がいいと思います。
小噺の下げを言ったりするのは、もちろんNGです。
あとメモ。
メモは僕も取るんですけど、噺が終わってお辞儀も終わって、噺家さんが袖に下がるときにささっと演目を書きとめるようにしています。
話している最中に書く必要はないんじゃないかな。噺に入った途端にペンを走らす人がいますが、あれも「俺はもうこの噺が何か分かった」というアピールっぽくて、はたで見ていて恥ずかしいのでやめた方がいいかなと思います。
と色々書いてきましたが、やはり大切なのはお客さんが会場に足を運んでくれるということなので、常識の範囲内で気楽に楽しむ、というのが一番かなと思います。
落語天の落語会はとても気楽な会ばかりですので、どうぞお運びくださいね☆
でも、携帯は必ず切ってください。お願いいたします。
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兄さん、そないツンツンした物書きして~。
まぁいろんな人が来はるけど、
みんな、大事な芸人さんのお客さんやからねぇ。
幸兵衛が つきやすいのよ 古参フアン
ど~してもっちゅうときは、
おもろく、こそっと、本人にだけ伝えたったらどぉ?
「そりゃあ俺は男前だが、ここで写真撮るのはよそうや(歯キラリ)」
投稿: | 2014年5月20日 (火) 23時08分
>これは差別的な意図では決してありませんが、女性の掛け声というのは感心しません。
歌舞伎の大向こうにも女性はいません。
大声が出したかったらアイドルのコンサートとかに行くのがいいのではないでしょうか。
ある文化の伝統やしきたりというのはその文化の不可分な要素であることが多く、みだりにポリティカルコレクトネスなどを持ち込むべきでないと思っています。
「女性が掛け声をかけるのがNGというのは差別じゃないか」とかそんなことを言うつもりは毛頭ないです。
しかし「大声が出したかったらアイドルのコンサートとかに行くのがいいのではないでしょうか?」は全く不要な一文だと思います。
その女性、噺の間中キャーキャー言っていたとかじゃないんでしょう?わきまえのないことをしたとしても落語を楽しみたいと思った客に感謝がないことも気になりますし、「アイドルのコンサート」というエンターテイメントを見下す気持ちがあからさまなことが残念です。
落語家が噺で笑わせるエンターテイナーであることを忘れて伝統芸の担い手でございと思い上がりるようになってから、落語家も落語もまるで面白くなくなった。私はそう思っています。
投稿: なつこ | 2017年3月19日 (日) 07時31分
教えてください。この前初めて 落語の 二人会というのに行ってきました。
普段は専らYouTubeで 聴いています。
そうしたら、多分 大トリの演目だと思うのですが 最後 太鼓がなり お忘れ物ございませんようにと アナウンス?の声と 男の人の声で 何か 叫んでおられました。
観客ではなく、裏方さん?というかスタッフの方だと思います。
アレは何と言っておられるのでしょうか?
投稿: 水の介 | 2019年7月10日 (水) 01時53分
会の最後に叩く太鼓は追い出し太鼓と言って、前座さんが「ありがとーございましたー」と大きな声で言います。
ちなみに、うるさい人に言わせると大トリという言葉は間違っているそうです。
トリは最後を意味するので大をつける必要はないらしいです。
個人的には別にどちらでも良いと思います。
同じく中トリという言い方も間違っていて、仲入り(休憩)前の出番は「仲入り」と呼ばれます。
大トリという言い方はNHKの紅白歌合戦で広まったという説もあります。
>水の介さん
>
>教えてください。この前初めて 落語の 二人会というのに行ってきました。
> 普段は専らYouTubeで 聴いています。
>そうしたら、多分 大トリの演目だと思うのですが 最後 太鼓がなり お忘れ物ございませんようにと アナウンス?の声と 男の人の声で 何か 叫んでおられました。
>観客ではなく、裏方さん?というかスタッフの方だと思います。
>アレは何と言っておられるのでしょうか?
投稿: 落語天 | 2019年7月10日 (水) 10時54分